自然葬について

〔記事投稿日時:2015-06-05 14:56:50

近年の、日本の葬儀の多様化を象徴する出来事に“自然葬の流行”があります。

自然葬というのは、遺骨を山や海などの自然に撒き、自然に還してしまう葬送方法のことをいいます。遺骨を散り散りに撒いてしまうことから“散骨”と呼ばれることもあります。近年ではこの自然葬が、従来のスタンスにとって代わって、執り行われることが多くなっているのです。

そこには多種多様な理由があると考えられますが、特に、宗教観の希薄化が関係していると考えられます。かつて、葬儀とは宗教における儀式でした。今よりも信仰心の厚い昔の人たちは、宗教に従って、葬儀を厳かに行っていたのです。

しかし、時代を経るにつれ、人の信仰心は薄れました。次第に葬儀は慣例的に行われるようになったのです。そうした中で、形骸化した葬儀に意味を見いだせない人も増えてきました。そうした人は葬儀の意味を再解釈して、いかに自分らしい葬儀を行うかに注目するようになりました。その流れの中で“自然葬”を求める声が大きくなっていったのです

そうした声を受けて、現在では数多くのところで“自然葬”を行えるようになっています。その種類も様々で、樹木葬や海洋葬などもありますし、変わったところでは“宇宙葬”と呼ばれるものまで登場しています。

こうした自然葬は、費用が安いのも特徴になります。中には、費用が安いからという理由で自然葬を希望する人もいるかもしれません。あるいは、自然に還りたいという原初的な願いで自然葬を選ぶ人もいるかもしれません。窮屈な世の中ですから、せめて死後は自由に解放されたいという願いが現れているのかもしれませんね。

結局のところ、自然葬が流行している理由は様々です。一言では片付けられない複雑な問題が、そこには横たわっているのです。情報が錯綜する現代、私たちは今一度、葬儀の意味と、宗教の意義について考え直さなければならないのだと思います。

筆者

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